【活動報告】中学校の校内研修で講師をしました~「起立性調節障害」と「落ち着きがない」生徒の対応法について~

8月下旬に平塚市内の中学校で、先生方の校内研究の講師としてお話する機会がありました。

実は昨年も研修を担当させていただき、今年は2回目。

「今回は、より具体的で実践的な内容にしたい」との担当の先生の意向で、中学校の現場でよく課題となる「起立性調節障害」と「落ち着きがない」生徒の理解と対応について話をしました。

起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)

はじめに、日本テレビのnews everyで放映された起立性調節障害(OD)についての映像を視聴していただきました。ODの当事者である中学生が、実際にどのような困難を抱えながら生活しているかがわかります。さらに、彼女が立ち上げた「起立性調節障害の子どもたちの会」の活動の様子も紹介されています。

その動画はこちらです↓

中学生の10人に1人が発症…朝起きるのが困難になる病気「起立性調節障害」とは──|日テレNEWS NNN
自律神経がうまく働かず、朝起きるのが困難になる病気「起立性調節障害」その割合は、中学生の10人に1人と言われています。

その後、ODについての基礎知識を解説した後、私が重要だと感じることをお伝えしました。
以下にその一部をご紹介します。

  • ODは、メンタルの問題ではなく身体の病気である。
  • ただし、自律神経の状態と関連して症状が変化するので、苦も無く楽しくできることはやれるが、緊張して頑張らないといけないことをやろうとすると調子が悪くなる。
  •  そのことを周囲の人(親、友人、先生)から「しかたがない」「当然である」と承認してもらえるなら、本人は安心して休める。
  •  逆に「楽しいことだけ参加してずるい」「仮病じゃないか」のように周囲が反応すると、警戒感や脅威を感じ、不安や恐怖心が膨らむ →回復の遅れにつながるおそれがある
  •  よって、周囲の理解を得るなど、本人が安心して休めるような環境づくりが大切である

落ち着きがない(ADHD傾向かな?と思う)生徒の理解と対応

発達障がいやADHD(Attention-deficit/hyperactivity disorder:注意欠如・多動症)についての情報が広く知られるようになったためか、「落ち着きがないからADHDかもしれない」と語られることが多くなったと感じます。

けれど「落ち着きがない」状態になる原因は、ADHDだけではないのです。原因が違えば対応法も違ってくるので、幅広い視野でとらえることが必要です。

落ち着きがない生徒の背景に考えうること

1 神経発達の特性(ADHDや自閉スペクトラム症の傾向)

2 ストレスによる影響(キャパシティーがいっぱいになっている)

3 警戒した状態の持続(例えば災害や家庭内の持続的な紛争など)

4 何かを得るための行動(注目、愛情など)

そして、仮にADHD傾向が強そうだと思われる場合に、先生方に大切にしてほしい視点についてお伝えしました。以下は抜粋です。

二次障がいを防ぐことが重要

 落ち着きがない子は叱られることが多く、自尊心が低下しやすい
  ➡万引き、非行傾向、嘘をつく、反抗的な態度、等が表れやすい
  ➡しかし内面的には、深刻な抑うつ症状を抱えていることも多い

・・・この時、「➡」より右に書いてあることは生まれつきの特性ではなく、周囲との関係性の中で表れた「二次障がい」であり防ぎうるものです。

よって、この子を叱らずに誉めることができるシステムを作っていく ことが大切です。

そして最後に、ODの生徒にも落ち着きがない生徒にも共通して望ましいことは、脳と、神経系と、身体と、心との、成長発達が促進されて、より調整され統合された状態になっていくことで、そのためには、身体に様々な刺激を与え、経験を豊富にしていく楽しんで運動することがおすすめです!・・・と、まとめました。

お話の合間で、身体を動かすエクササイズも体験していただきました。

後からいただいた感想を読むと、じっと座って一方的に話を聴いていた時と、笑って話しながら体を動かした時の、身体・心・脳の状態が違うことに気付いてくださった先生方が多かったようです。

先生方の感想より

  • 身近に考えられる生徒の様子を題材にしてくださり、内容に入り込みやすかったです。様々な生徒の反応も、見方を変えて柔軟に対応していきたいです。
  • 楽しんで運動をすることの大切さや、今の状況を観察し、分析し、気持ちよく過ごせる環境を作ることが大事ということを学びました。
  • 身体を動かすことで頭がスッキリすること、そしてそれが必要であることが印象に残りました。
  • ODやADHDの生徒を理解すること(周りの友人や保護者の思いも含めて)、安心・安全な環境を作ることを意識して生徒と向き合いたいと思います。
  • 私自身が、生徒の進路や学習面を心配して戦闘モードに入っていたかもしれないと気付きました。まずは本人が安心して過ごせる環境や状況を整えてあげられるよう考えていきたいと思います。
  • 時代の変化の中で、求められる知識、対応の仕方、考え方がどんどん変化し、広がり、なかなか生徒や保護者と向き合うことに自信が持てなくなっている自分がいます。今日のお話はもう少し自分なりに頑張ってみようと思えるもので、とても貴重な時間でした。

先生方がとても熱心に聞いてくださったことが伝わり、大変ありがたく感じました。

先生方が生徒さんと良い関係を作り、成長を支えるお仕事をしていくための一助となれば嬉しいです。

【出典】

起立性調節障害の子どもたちの会 https://foryourselfwithod.wixsite.com/site

日本小児心身医学会ウェブサイト「起立性調節障害」 https://www.jisinsin.jp/detail/detail_01/

※ベネッセ教育情報 みつかる、明日のまなび ベネッセ教育総合教育研究所ウェブサイトより https://benesse.jp/kosodate/201702/20170213-1.html

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