歩くカウンセリングって、聞いたことがないなあ
日本では少ないけれど、“walk and talk therapy” と検索すると、たくさん出てくるよ!
うつや不安を減らし、認知機能を高めるウォーク&トークセラピー
歩きながら話すセラピーは、新しいセラピーの形態として、ヨーロッパやアメリカを中心に公園や自然の多い散歩道などで提供されています。
その利点は数えきれませんが、代表的なものを以下に挙げます。
1⃣ 運動による効果(うつや不安を減らす、認知機能の向上)
2⃣ 「感情の処理」と「身体活動」という刺激の組み合わせが、脳を活性化する
3⃣ オフィスで座って向き合う対話スタイルでの緊張感や不安が減る
4⃣ 不安で敏感なタイプの人は、視線から解放されることで快適に感じる
5⃣ 屋外には自然がもたらす刺激が多く、五感に意識を向けることでマインドフルな状態になり、より創造的で深い考えに進む
6⃣ 屋外にいるとレクリエーションや余暇のような感覚が得られ、活力や意欲が上昇する
メンタルが落ちやすいのを防ぐ効果があるのかな
ネガティブ改善だけじゃなく、ビジネスや人生の決断などクリエイティブな発想が欲しい時にも効果的だよ!
ソクラテスやジョブズも、歩きながら対話していた
また、古代ギリシャの哲学者・ソクラテスやアリストテレスは、散歩をしながら弟子たちに抗議をしました。そこからアリストレスらは「逍遥学派」と呼ばれたそうです。
スティーブ・ジョブズは、ウォーキング・ミーティングという形態でビジネスの打ち合わせを行い、多くのアイデアを生み出していたと言われています。
ダーウィンやベートーヴェンなど、時代を問わず、歩くことの効果を活用して独自の創造性を発揮した偉人は多くいます。
スタンフォード大学の2014年の研究では、歩いているときには創造性が平均60%アップするというエビデンスが示されています。
でも暑い時や、疲れている時は、歩くのつらいな
歩くことは、しかけの1つ。室内でも同様の効果を得る方法があるよ!
同じものを一緒に見る「共同注意」が自尊心を作る
発達心理学の分野では「二項関係」と「三項関係」と呼ばれる人との関係性があります。
二項関係とは、向き合う関係。生後間もない赤ちゃんと親や恋人同士のような関係性です。お互いをよく知り親密になれる反面、距離が近くなりすぎると依存や支配に結びつくこともあります。
三項関係は、生後9か月前後から成立するとされる対人関係です。誰かと同じのものを見ながら、その人の思いや意図を汲んで参照していく関係性です。
三項関係で「一緒に同じものを見ている」時には「共同注意」が働くと言われています。「共同注意」の成立は、人とのコミュニケーションの基礎になると考えられているのです。
幼い子どもが「見て、ワンワンかわいい」と指さした時に、親もそちらを見て「うん、ワンワンかわいいね」と言う。このような体験を通して「自分の感覚や感情はこれでいいのだ」と、自分への信頼感や安心感が持てるようになります。
つまり「一緒に〇〇する」体験は、コミュニケーション力だけでなく、自尊感情や自己肯定感という心の基盤を育んでいくのです。
からだを使う×共同注意の体験が、癒しと創造性をもたらす
運動がメンタルヘルスにもたらす効果は非常に大きいです。
様々なからだの感覚が電気信号として脳に送られると、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質や自律神経系の状態が調整されることがわかっています。よって、感情が安定化されるだけでなく、血圧が高い人は下がり、低い人は上がって最適値になる、など心と体の両方を調整します。
当ルームでは、ウォーキング以外にも室内でのメニューとして、臨床動作法や五感のエクササイズなどもあります。からだの体験に注意を向けて、共に観察しながら話すセラピー構造によって、ご自身がもともと持っている治癒力や調整力を発揮できるように働きかけます。
また、その体験の積み重ねは自己肯定感の補強にもつながり、今後も自信をもって決断や行動をできるようになっていきます。
でも知らない人と話すの苦手だから、カウンセリングは気が進まないな…
話題を作らなくてもいいから、うまく話せなくても大丈夫だよ!
うまく話せなくても大丈夫な、体験共有型カウンセリング
当ルームで行うカウンセリングとセラピーは、「一緒に同じものを見ながら話す」構造を重視しています。
私がこのことの意義に気づいたのは、保健室で子どもたちのけがの手当てをする体験からでした。
とげが刺さった指先を一緒に眺めて「これは痛かったね」「よくがまんしてここまで来たね」とねぎらってから、ピンセットで抜くのか、針でとるのか、そのまま絆創膏を貼るかなど、手当ての方法を提案します。その子が選んだ方法で、一緒に指先を見つめながら手当てをします。時には途中から「自分で取ってみる」という子もいます。そして納得いくまでやると、結局とげが取れても取れなくても「もう大丈夫!」と元気になって走っていくのです。
このように、何かを一緒に見て、心を合わせて一緒に取り組むプロセスこそが「治療的」で、人が自分自身のコントロール力を取り戻し、自ら回復することを助けると考えています。
景色、風、香り、気温、手触り、身体の感覚など、何かに共に注意を向けることと対話をすることを組み合わせて自己治癒力を高める「体験共有型カウンセリング・セラピー」を重視します。
着席スタイルで話すカウンセリングの時にも、図やイラストを描いて一緒に見ながら話すなど、三項関係を持ちやすい工夫をしています。
だから、うまく話せなくても大丈夫です。
安心して気楽にお越しください。