発達特性とは、脳の生まれつきの性質
「発達特性」とは、「発達障害の人の特徴」ではなく、生まれつきの脳神経の発達の特性(傾向)のことを言い表しています。
生まれつきの脳の個性は、顔や姿と同じように、ひとりひとり違います。
地図を読むのが得意な人も、不得意な人もいます。
勉強、運動、音楽、会話、etc. ・・・何においても得意や不得意は人それぞれです。
特性を「連続体(スペクトラム)」で、とらえる
近年は、様々な特性を「有無」や「白黒」で線引きするのではなく「連続体(スペクトラム)」でとらえる、という考え方が支持されるようになってきました。
「色のスペクトラム」というフレーズを聞いたことがありませんか?
赤、青、緑などは別々の色なのではなく、その間には中間色があって連続していることを表します。
下の図は、神経発達の特性をスペクトラムで表したイメージ図です。
特性の度合いが強く生活に困難をもたらしている場合、「発達障害」と診断されるかもしれません。
けれど「発達障害」と「一般人」との間に明確な境目はありません。
中間には、診断されるほどではない、多様な脳の個性を持つ人々がいると考えられます。
不慣れなことが苦手な、Aさんの例
毎日決まった手順で行う仕事に就いたら ・・・
Aさんは、初めての人や場所が苦手です。でも同じパターンの工程をこなす仕事なら、慣れてしまえば飽きることなく、安定して働くことができます。
下の図に、Aさんの特性の度合いを、黄色い⇩で表してみました。
もし、Aさんが所属する職場が、毎日決まった順序で作業を行う業務形態であれば、Aさんは得意な力を発揮できるでしょう。
このとき「支障をきたす・困ってしまうライン」は下の赤線の位置にあると考えられ、Aさんは特性によって「困らない」、つまり「発達障害」の診断を受けなくても暮らしていける状況と言えます。
臨機応変に動く必要がある職に就いたら・・・
けれど、もしAさんのお仕事が、接客や営業など、状況に合わせて対応を変えることが必要な業務だと、Aさんは困ってしまったり、疲れ過ぎたりするかもしれません。
そのとき、「支障をきたすライン」(赤線)は、下の図のような位置にあると考えられ、Aさんは特性によって「困っている」ので、何らかのサポートが必要な状況と言えます。
このように、Aさんの特性は一定であっても、所属する環境によって「困りぐあい」や「支障の度合い」が大きく変わってくるのです。
初めての人や場所とすぐ打ち解ける、Bさんの例
Bさんは、好奇心が強く、目新しい状況でも人と積極的に関わり、はりきって仕事をします。
けれど、単調な作業の繰り返しだと飽きてしまい、意欲が下がって居眠りやミスが多くなります。
Bさんは、日々新たな刺激がある職場では、左下の図のように「困らない」けれど、毎日決まった作業を繰り返し行う職場では、右下の図のように「困ってしまう」かもしれません。
このように、その人の特性と、職場や業務の相性によって、適応度が変わってくるのです。
合わない仕事に就いたことをきっかけにメンタル不調などの問題が生じ、初めて脳の個性に気づくケースも少なくありません。
合わない環境で「やればできる」を強いられると・・・
「発達障害」や「脳の特性」という考え方は、この20年ほどで広まった新しい概念です。
ひと昔前までは「どんな環境でも努力すればできるようになる」「適応できないのは本人の怠けやわがままのせいだ」というような見方が普通にあった気がします。
今の日本の社会でも、向き不向きを考慮せず「できないのは未熟」と責め、努力を強いる「根性論」や「自己責任論」は、完全に無くなってはいません。
このような過剰なストレスやトラウマ的体験によって、こころの不調や自己否定感情に悩んでいる方々が大勢います。
まじめで一所懸命ないわゆる「いい人」が、頑張ってもつらい状況から抜け出せずに疲れ切ってしまうケースも多いのです。
過剰適応による「二次障がい」のリスクを減らす
このように、仕事内容や職場環境が自分に合っていないために、必要以上に自分を責めたり過労になったりして、うつ、不安、体調不良といったメンタル不調に悩まされるようになることを「二次障がい」と言います。
二次障がいを起こさないためにも、自分の特性に気付き、適した状況で過ごせるよう、少しずつ工夫できるといいですね。
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参考文献:
本田秀夫著 発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち 2018年 SB新書