【活動報告】アカデミックハラスメント防止研修(かながわ農業アカデミー)「まずは先生方ご自身が『安全で安心』であること」

2026年8月6日、かながわ農業アカデミーの職員の皆さまを対象に、「学生との適切な関係構築とアカデミックハラスメントの防止について」をテーマとした職場研修の講師を務めました。

予防の方法をお伝えしたいという思いで「湘南こころの保健室Join」を始めた私にとって、ハラスメント「防止」という予防的なお話ができる機会は、とても嬉しいご依頼でした。

教育機関における「指導」と「ハラスメント(支配)」の線引きは難しいものがあります。

「どこまで指導してよいか分からない」
「熱心に指導しているつもりが萎縮させてしまわないか」

このようにお悩みの教職員の方も少なくありません。

今回の研修では、単に「やってはいけないNG行動」を並べるのではなく、教職員も学生も安心して過ごせる職場・教育環境づくりをテーマにお話しさせていただきました。

当事者だけではなく「周りの人」の気づきに重点を置きました

アカデミックハラスメントは、パワーハラスメントの一部で、教育機関での立場や人間関係の優位性を利用した嫌がらせを指します。

教職員と学生、先輩と後輩、経験者と未経験者…。このようにパワーバランスの上下がある人間関係では、下の立場の人が断りにくい構造があり、「指導」は「支配」と背中合わせなのです。

では、防止の最重要ポイントは何でしょうか。「ハラスメントはダメ!」と伝えて加害者を減らすことはもちろん大切ですが、私は当事者以外の「周りの人」への働きかけが鍵だと考えています。

加害者の言動による傷つきに加え、その場にいた周りの人たちが見て見ぬふりをしたり、あいまいに笑ったりしていると、被害を受けた人は「組織全体から否定された」ように感じ、いっそう深い孤立感と絶望感を抱きます。

私のところにご相談に来られる方の多くも、加害者の言動と同じかそれ以上に、周囲の無関心さに傷ついたと話されます。

そこで本研修では、周りの人の気づきと、できることに最も重点を置きました。また、ハラスメントの加害者も被害者も、多くの場合「特別な性格の人」ではなく、ごく普通に見える人だという前提に立ち、加害者を「悪者」と特別視しない姿勢で進めました。

研修の内容(全体の流れ)

本研修は全三部構成(+終わりに)で、理論から実践的なワークまで段階的に深めていきました。

【第一部】アカデミックハラスメントとは?

ハラスメントの基本と「心理的安全性」の視点をお伝えしました。研修では〇×クイズなども交え、「加害者・被害者は特別な性格の人ではなく、高ストレス下や特定の状況下では誰もがどちらにもなり得る」という構造をお伝えしました。

【第二部】「周りの人」の気づきとエンパワメント

周りの人がなぜ気づきにくいのかを、心理学の視点から解説しました。誰もが加害者になりうること、被害者は恥や罪悪感から隠そうとすること、そして「まあ大丈夫だろう」と考えてしまう正常性バイアスの3点です。

続いて、初期の小さなサインへの感度を高めるミニワークを行いました。サインに気づいた後の行動としては、次の6つをご紹介しました。

  • その場で注意をそらす
  • 後から被害を受けた人に声をかける
  • 記録を残す
  • 第三者に相談する
  • 複数人で直接介入する
  • 日頃から、サインに気づく視点を組織で共有する(ヒヤリハットの共有など)

【第三部】学生との適切なコミュニケーションと関係構築

「北風と太陽」のたとえを入口に、今日から使える関わり方を4つ、体験を交えてお伝えしました。

  1. アドバイスよりアクティブ・リスニング
  2. 禁止のメッセージから「肯定のメッセージ」へ(「遅刻するな」→「時間を守って行動しよう」)
  3. 「あなたメッセージ」から「私メッセージ」へ(「〜して」→「〜だと私は困る/心配だ」)
  4. 境界線(バウンダリー)を尊重する(学生に反発されたとき、こちらが相手の領域に踏み込みすぎていないかを見直す視点)

特にアクティブ・リスニングは、2人組で「よくある会話」と「アクティブ・リスニングの会話」を読み合わせて役割を交代し、さらに相談場面のデモンストレーションも行いました。声に出して違いを体感することで、「指導」を「支配」にしないための実践的なコミュニケーション技術を学んでいただきました。

終わりに:教職員ご自身が「安全で安心」でいられることが最優先

ハラスメントは、個人の性格の問題というより、高ストレス下で対処に手詰まりになったときに起こる「反応」ととらえることができます。だからこそ、ハラスメントを防ぐには、誰もが「ここにいて大丈夫」と感じられる、心理的安全性の高い職場環境が欠かせません。

人を育て導く教職員は、大変なお仕事です。まずは先生方ご自身が「安全で安心」と感じられる状態でいられることが出発点であり、お一人お一人が機嫌よく毎日を過ごせることが、ハラスメント防止の最善策だと考えている旨をお伝えして、締めくくりました。

参加者アンケートの結果

研修後のアンケートでは、次のようなご回答をいただきました。

  • 内容がわかりやすかった:約95%
  • 今後の仕事や生活に役立ちそう:約90%
  • 満足度:約90%が「満足」
  • 進め方(話し方)は、約90%が「ちょうどよかった」

時間配分については、ワークの時間をもう少し取りたいというご意見もありました。時間は、ご希望に合わせて調整できる部分だと感じています。

参加者のご感想

自由記述から、一部を抜粋してご紹介します。

  • 「ミニワークがあり、わかりやすかったです。」
  • 「生徒とのコミュニケーションの取り方など、実際に声に出してみることで違いをより感じることができました。」
  • 「職員のペア、グループで、会話しながら進めたことは、効果が実感できてよかった。」
  • 「『ハラスメントを個人の問題ではなく、高ストレス下での対処の手詰まりととらえる』は、抽象的な問題に具体的に対処する際の第一歩だと思いました。精神論ではなく、技術的、事務的に解決していけるという風に理解しました。」
  • 「学生への接し方のみならず、職場における職員との関係においても参考になり、活かしていきたいと思います。」
  • 「まずは先生自身が『安全で安心』と感じられる状態でいられることが大事。」

印象に残ったキーワードとしては、「アクティブ・リスニング」「エンパワメント」「サインへの気づき」などが挙がりました。

「もっと聞きたかったこと」としては、初期段階での気づき方や予防のヒント、特別な配慮が必要な学生への対応と相談先、デリケートな情報を知ってしまったときの上司への相談方法などのご希望をいただきました。今後の研修づくりに活かしてまいります。

アカハラ・ハラスメント防止研修の講師をお探しの方へ

Joinでは、臨床心理士・公認心理師の立場から、学校・企業・福祉施設などの研修講師を承っています。次のようなお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

  • 毎年の研修がマンネリ化しないよう、体験型のワークを取り入れたい
  • 加害者探しではなく、「周りの人ができること」を中心に据えたい
  • 学生や部下との日々のコミュニケーションにすぐ使える技法を伝えたい
  • 組織の状況、人数、時間に合わせて内容を調整してほしい

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