「上司と合わなくて、ストレスがすごいんです」
「日曜の夜になると動悸やめまいがして、体調にも出てしまって・・・」
こんなご相談を受けることが、よくあります。
上司と部下という関係ではなくても、先に入職したバイトの先輩だったり、趣味やボランティア団体のベテラン株だったり、所属するコミュニティの目上の人と合わない場合、心身に不調をきたしてやめざるを得なくなるというケースも少なくありません。
今回は、これらの目上の人をひっくるめて「上司」とし、付き合い方のヒントをお伝えします。
あなたの周りに、こんな上司や先輩、いませんか?
□ 人の話を聞かない。
□ 困りごとを相談しても「自分だったら」という視点のお説教や自慢話になる。
□ 感情的で、思い付きのような指示の出し方をする。
□ こだわりポイントが独特で、そこ?という所を突いてくる。
□ 部下をほめたり評価したりできず、注意ばかりする。
□ 仕事はできるが、人を育てるのはうまくない。
このような人の下で働くとなると、戸惑うことが多そうです。
こちらが認めてもらえるよう努力をしても、見てほしいところを見ていなかったり。
より良い仕事のために、職場のみんなのために、と頑張って意見を伝えても、かみ合わなかったり。
努力をすればするほど徒労感にさいなまれることが続くと、エネルギーを使い果たし、ある朝起き上がれなくなってしまうかもしれません。
苦手な上司とつきあうヒント① 【上司への対応編】
表面上は丁寧に接する
人は、自分が「大切にされていない」と感じると、不安や怒りが生じやすくなるものです。
あなたが敬遠するくらいですから、その上司は不安や怒りに傾きやすい人なのかもしれません。
うわべだけでいいので、その上司が「自分を尊重してくれている」と思えるように「接遇マナー」を心がけると良いでしょう。
「気持ち的にムリ!」という方は、顧客対応の練習をしていると思ってみてください。ロールプレイ(役割演技)の実習であれば、気持ちは伴わないのが普通です。
もし、その上司を満足させる接遇を身につけることができたら、それは今後も使えるスキルとして、あなたの武器になるでしょう。
距離(間)をとって、観察・分析する
心理学者のR.ソマーは、「パーソナルスペース」という考え方を提唱しています。
目には見えない自分の感覚で、他者に侵入されると不快に感じる空間を「パーソナルスペース」と呼んでいます。
動物にたとえると、なわばりのようなもの。境界線を越えて入ってきた者を敵とみなし、逃げるか闘うかで応戦するための心身の反応が自然に生じます。全身に力が入り、心臓がドキドキし、息が荒くなり、不安や敵意の感情が湧くのです。
このように、自分が望んでいないのに他人がパーソナルスペースに入ってくると、ストレス状態になります。「トイレ」でも「所用」でも何かしらの理由をつけて、いったんその場を離れて距離をとり、自分が安心できる状態に戻しましょう。
そして、遠く安全な場所から双眼鏡で覗くような感じで、上司の生態を観察してみてはいかがでしょうか。その上司は、どんな時に喜び、どんな時にテンパり、どんな時に安心を感じるのか・・・。「上司図鑑」に掲載する説明書きを探るようなイメージです。
このように客観的な視点でとらえ直すことができると、上司がなぜそのようなふるまいをするのかを冷静にとらえることができるかもしれません。
会話のキャッチボールが難しい場合は、聴くことに徹する
苦手な上司とやりとりをしていると、自分が言いたかったことと違う方向へ話が流れて行ってしまい、上司のペースに合わせざるを得なくなったことはありませんか。
また、焦って話を戻そうとすると、会話がギクシャクしたり、平行線になったり、結局ただ言って終わった感じで、理解してもらえずがっかりした経験はないでしょうか。
このように「人の話を聞く」のが苦手な上司には、聞くことと話すことを分けて対応するといいかもしれません。つまり、ひとまず上司の話の聴き手に徹するのです。
人は自分の話をしっかり聞いてもらえると「意見を尊重されている」と感じ、安心感や自己肯定感の回復が促進されます。上司が不安で緊張した状態から、心のゆとりを取り戻す効果が期待できるでしょう。
こちらの意見を伝えるのは、また別の機会をうかがって、効果的な方法で伝えることを検討しましょう。
ただ、聞いてもらえることが嬉しくて話が長くなる人もいます。長話を避けたい時には、予め「●時には××へ行くので失礼します」と、タイムリミットを示しておくと長話を予防できるかもしれません。
二人きりで話さない
前項では「聞き役に徹する」と書きましたが、マイペースで空気を読むのが苦手な人の場合、ここぞとばかりに度を超えて話し続け、聴き手のあなたが疲弊してしまう心配があります。
そんな場合は、できるだけ二人きりで話すことを避ける方が良いでしょう。
話しているメンバーが三人以上になると、「上司=話し手」「部下1=聞き手」「部下2=ストッパー・「呼び出されました」など話を終了する言葉をかける役」という具合に、役割分担をすることができ、場面を転換しやすくなります。
また、二人きりよりも第三者がいる時の方が冷静さを保ちやすく、お互いに過剰に暴走することを防ぎやすいものです。
「合わない」上司との付き合い方のポイント(前編)まとめ
今回は「合わない」上司と付き合う時のポイントのうち、その上司本人への対応の仕方についてお話しました。
【苦手な上司対応のポイント】
1.表面上は丁寧に(尊重していることが伝わるように)接する
2.距離(間)をとって、観察・分析する
3.会話のキャッチボールが難しい場合は、ひとまず口をはさまず聴く側に徹する
4.二人きりで話さない
仕事というものは、求められている役割を果たすことによって報酬を得るものです。
よって、職場の上司との関係において、人と人が心の底からぶつかり合うような付き合い方をする必要はなく、冷静な心と頭で、役割を演じることができれば良いのです。
冷静に観察しながら役割をこなしていくうちに、時には「この人のこういう所はいいな」と素直に感じられる人や場面に出会うこともあるかもしれません。
自分が心を開きたいと思った人には近づき、そうでない人には一定の距離を置くなど、人との付き合い方を自分でコントロールできていると感じられるようになると、疲れやストレスも最小限に済ませられるようになるでしょう。
また、次回は、上司への対応以外の、付き合い方のヒントをお話したいと思いますので、どうぞお楽しみに・・・!