入所・通所型福祉施設の職員さまのニーズのもと、ハラスメント研修を実施しました
先日、神奈川県秦野市の丹沢レジデンシャルホームにて、社会福祉法人常成福祉会の入所および通所施設の職員様を対象に「働きやすい職場づくりをハラスメントの視点から考える」という研修を行いました。
研修企画の段階では、ご担当者様から、以下のようなお話をうかがいました。
- パワーハラスメントの防止措置が義務化され、法人では毎年研修を行っているが「マンネリ化」「形骸化」してしまわないか懸念がある。
- 「パワハラ」や「セクハラ」については情報も多く意識しやすいが、それに該当する出来事は少ないので、研修しても他人事になりやすい。
- このような課題を踏まえ、もっと「自分ごと」としての実感を伴い、自分たちの職場の雰囲気をより良くしていくきっかけにつながるような、研修を実施したい。
- 心理職の専門性や視点を活かして、周囲とのコミュニケーションや信頼関係の構築に役立つ話をしてほしい。
このようなご要望にお答えしようと、Joinならではのハラスメント研修作りに着手しました。
NGな言動の強調が、かえってハラスメントを招く空気を作るジレンマ
ハラスメントについて知る初期の段階としては、
「ハラスメントとは何か」
「どのような言動がハラスメントに該当するのか」
を知る必要があります。
けれど、研修が毎年繰り返され「これはセーフだけど、これは✖」というNG言動のリストアップに慣れきってしまうと、緊張感を持てずに飽きてきたり、NGに近い人を見つけて揶揄したりと、かえって職場の空気を悪くする火種にならないかと心配に思います。
特定の言動を「悪」とするメッセージや、人の行動を白と黒で線引きをすることが行き過ぎると、逸脱者を見つけて攻撃しようとする正義感がエスカレートし、攻撃性を生む場合があるのではないでしょうか。
そんな空気の場では、人々が「怖い」「本音を出せない」「いつ攻撃されるか不安」になるため、自律神経の緊張状態によってイライラを抱えやすく、よけいにハラスメントが生じやすくなる…という悪循環に陥るのではないかと考えます。
「誰も責めない、悪者にしない、ハラスメント研修」の実現
本研修では、「パワハラ」や「セクハラ」よりも、身近に感じやすいハラスメントとして、「モラハラ(モラルハラスメント)」と「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」を題材に取り上げました。

そして、このような攻撃や威圧を「個人の性格の問題」で片付けても解決方法が見つけづらいことを問題提起しました。それよりも「高ストレスな環境下で自律神経のバランスが崩れ『緊張や不安』が高い状態に傾いた時に、『ストレス反応』として起こる」ととらえれば、対処法が見つけられるのではないか、というご提案をしました。
そして、ご自身の自律神経の状態を自己観察するワークを行いました。直感的に理解しやすいように、赤、青、緑の3色で状態を表し、どのような場面でどのような傾向(色)になるのか、気づきを促しました。
※モラハラ・フキハラについて、詳しくはこちら
『誰もが、何かができる』――周りの人にできることを、最も強調しました
個々の参加者が自身の傾向の振り返りをした後に、対処法をご紹介しました。
①ストレス状態を解消するセルフケアのワーク
ストレスを発散、解消するために、個人でできる具体的な方法を挙げ、いくつかを体験していただきました。
②自分と他者とがお互いに良い状態になるためのコミュニケーション法
同じ職場にいる人たちと、どのような声のかけ方をし、どのように関係を持つと良いかヒントをお示しし、やりとりの事例を体験するワークを行いました。
③周りの人にできることをリストアップ
周りで見ている人が、ハラスメント的な言動や嫌な空気感に気付いた時の具体的な行動をご提案しました。(以下はスライドの一例です)

そして、自分と周囲の人々の状態は、互いに影響し合っているので、一人ひとりの状態がより良く調整されることで、チーム全体が落ち着いて、安心して働ける職場になることをお伝えしました。
そのためには、誰もが「ここにいて大丈夫」と感じられる、心理的安全性の高い職場環境が重要であるというメッセージで締めくくらせていただきました。
参加者のご感想
本研修にご参加いただいた従業員の方々のご感想から、一部を抜粋してご紹介します。
- 「これまでも似たような研修を受講した経験はあるが、今回は具体的な言葉や資料の工夫により、自身と相手双方の視点を意識したコミュニケーションの大切さをより深く理解することができた。」
- 「まずは自身のセルフケアを行うことで、自分を守る意味と心身の状態の理解につながると学んだ。」
- 「講師の心理士による穏やかで親しみやすい語り口と、視覚的にも工夫された内容で、最後までわかりやすい研修だった。」
- 「根深い問題には第三者を入れて対応すべきというところを共有できたことに安心できた。」
- 「傾聴やI(私)メッセージを上手に行えるようになりたいと思った。」
≪参考文献≫
「ハラスメントがおきない職場のつくり方」中川瑛著 大和書房 2023
「人事・総務担当者のためのハラスメント研修設計・実践ハンドブック」加藤貴之著 日本法令 2020
「ハラスメントの解剖図巻」宮本剛志著 誠文堂新光社 2024
「不機嫌は罪である」齋藤孝著 株式会社KADOKAWA 2018
「部下との対話が上手なマネージャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方」白井剛司著 日本能率協会マネジメントセンター 2024
「ポリヴェーガル理論がやさしくわかる本」吉里恒昭著 日本実業出版社 2024
「はじめてのメンタルヘルス入門」吉里恒昭著 セルバ出版 2022



