現代の生活で生じる「疲れ」や「だるさ」の理由とは?
ゴールデンウイークが終わってひと月。
4月から始まった新生活も日常化し、業務も学業もペースアップを求められる頃ではないでしょうか。

6月は祝日がないし、夏休みもまだまだ先…。だるいし、しんどいなあ。

ところで、職場や学校と家を往復する生活を続けていると、なぜ疲れてだるくなるのかな?
私はよくご相談の中で皆さまに、休日の過ごし方をお尋ねします。「自然が豊かな所へ出かけたいけれど、実際には家の用事をしてゴロゴロして終わってしまう」というお答えが多く、本当はもっと自然と触れあいたいと求めている方が多いと感じています。
「人間は自然から遠ざかるほど病気に近づく」
こんな言葉を聞いたことがありますか?古代ギリシャ時代に、「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスが唱えました。今からおよそ2400年も前のことです。彼はまた「人間が、ありのままの自然体で、自然の中で生活すれば、120歳まで生きられる」という言葉も残しています。古代の人たちも、私たちと同じような悩みを抱えていた様子がうかがえます。
多くの人々が「もっと自然と触れ合いたい」と感じるのは、「健康になりたい」と思うのと同じくらい当たり前のことで、人間にとっては本能に近い根源的な欲求と言えそうです。
「自然欠乏症候群」の子どもの症状とは?
2005年にアメリカのリチャード・ルーブ氏は、『あなたの子どもには自然が足りない』という著書の中で「自然欠乏症候群」を提唱しました。自然から遠ざかった現代の子どもたちに精神不安定や様々な症状が表れることを指摘し、大きな話題となりました。
【自然から遠ざかった子どもたちに表れた症状】
- 集中力がない。ひとつのことに集中できない
- 落ち着きがなく、じっとしていられない
- 忍耐力がなく、かんしゃくを起こす
- 他人に対する気遣いができず、友だちとうまく遊べない
- 平衡感覚が乏しく、よく転ぶ
- 視野が狭く、すぐ横で起きていることに気付かない
このような症状に悩まされて病院を受診し、検査を受けても数値的な異常値は見つからず、「気持ちの問題」や「発達障がいの疑い」とされることもあるといいます。
大人の心身にも影響する「自然欠乏症候群」
大人も例外ではありません。「自然欠乏症候群」の著者で医師・医学博士の山本竜隆氏は、自身も仕事に追われて自然欠乏症候群であったと明かしています。大人にとっても「自然が足りないことや、不自然な状況に陥っていること」は、心身の不調の原因の一つであると指摘しています。
自然が不足した生活を送っていると、五感が鈍くなり、一点に意識を集中することによる疲労がたまり、注意力が散漫になりやすいそうです。また、逆に神経が過敏になり、些細なことでイライラしやすくなり、衝動的な行動が増える場合もあるそうです。
・・・読者の皆さまも、思い当たることはありませんか?
なぜ、自然が人間の健康に必要なの? 「自然セラピー」の考え方
自然回帰理論(Back-to-Nature theory)
千葉大学の自然セラピー学研究室によると、人類が誕生してから700万年のうち、99.99%以上の時間を自然の中で過ごしてきたといいます。つまり私たちの体は、もともと自然環境に合わせてつくられているのです。だから自然に触れるとリラックスするのは、科学的にも理にかなったことなのです。

自然がもたらす「予防医学的効果」
「森林浴」という言葉は、1982年に当時の林野庁長官によって提案されました。その後、2018年以降は「Shinrin-yoku」として日本発の英語となり、今では世界中に広まっています。
森林浴研究の第一人者である医師の李卿氏は、森林浴によって免疫力が強くなることや、森林中の香り成分・フィトンチッド(樹木が発散する揮発性物質)が人のメンタルやフィジカルに効果をもたらすことを解明しました。さらに、血圧、心拍数、睡眠、気分改善、ストレス軽減、うつ改善などの効果についても研究を重ねています。
このように、自然と触れあうことによって生理的にリラックスし、免疫機能を改善することは、病気になる前から体を整える「予防医学的効果」といえます。自然との触れあいを増やしていくことは、人々が毎日をより健康で快適に過ごせるようにし、医療費の削減にもつながると考えられています。

遠くへ行かなくても大丈夫。「都市森林浴」と「小さな自然」

「森林浴」は良さそうだけれど、まとまった休みがないと、なかなか行かれないなあ。

遠くの山深くなどの「大自然」まで行かなくても、大丈夫ですよ!
千葉大学の宮崎良文氏は、自然を3つのスケールに分けて研究しており、どれも生理的なリラックス効果が確認されたといいます。
- 大きな自然:森林、木材を使った建築物など
- 中程度の自然:公園、庭、バルコニーなど
- 小さな自然:木製品、盆栽、花、自然音、アロマオイルなど

無理せず「自然体」で、自然とのふれあいを楽しむ
「もっと自然を取り入れなければ…」と頑張ってしまうと、それは逆に自分にとって「不自然」な状態になってしまうかもしれません。
「自然体」の自分のままで、「好き」「快適」と感じる自然を選ぶことをおすすめします。
たとえば、ふとした時に空を見上げるだけでもいいのです。
天気予報だけではなくて、自分の目や五感で今日の天気を感じて、空の色を眺める。そんな小さなことから始めてみませんか…?
休日が少ない6月ですが、皆さまがそれぞれに、自然体で自然と触れあいながら、健康で快適に過ごせますように…!
まとめ:今日からできること
- 「なんとなくしんどい」のは、自然不足のサインかもしれません。
- 自然との触れあいは、森や山へ行かなくても大丈夫。公園・花・木のぬくもりなど、身近なところにあります。
- まずは「空を見上げる」ことから。自然体で、少しずつ始めてみましょう。

≪出典・文献≫
自然欠乏症候群 体と心のその「つらさ」、自然不足が原因です 山本竜隆 2014 株式会社Kワニ・プラス
森林浴: 近くの公園で 家族と一緒にリラックス ストレスを解消し 自律神経を整え 免疫力を高める 新しい健康増進法 李卿 2020 まむかいブックスギャラリー
千葉大学自然セラピー学研究室ウェブサイト http://www.fc.chiba-u.jp/research/naturetherapy/research.html#3
サカタのタネ園芸通信「花と緑 癒しの科学」【第12回・最終回】自然セラピーの効果的なリラックス法 https://sakata-tsushin.com/yomimono/essay_miyazaki/detail_58/
ナショナルジオグラフィック 連載 Webナショジオ・インタビュー C・W・ニコル 第3回 自然欠乏症候群が子どもをむしばむ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120717/316209/


